うなぎの生態についてお教えください
Q: ある人曰く、「ウナギは、貫太郎ミミズ(シーボルトミミズ)が大好物で剣山系へ登ってくる。」
ウナギの産卵地は,マリアナ海とか言われます。そんなウナギが勝浦川を遡って,
1000m級の山までシーボルトミミズを求めていくのでしょうか?
今わかっている,ウナギの最新の生態をお教えください。
A: 「ウナギがシーボルトミミズを好む」ということについては地域性のある伝承でし
て、山間地ではそのように言われることが良くあります。釣り餌に使うと良いからで
しょう。でもこれも、種として絶対的な共通事項ではありません。もともと、シーボル
トミミズ自体が、普通に居る餌生物ではありませんし、水中にいるウナギがそれを
食べる機会は自然界においては極めて少なく、それを食べるためにウナギの行動
が進化しことは100%考えられません。そうであればすでに絶滅しています。
なお、ウナギが食べているものは、エビカニだったり、場所によってはアユだった
り。 これは、調査で電気ショッカーを使いますと、吐き戻すのでわかります。 ウ
ナギは遡河能力、空中活力が強く、水がしたたり落ちていれば、ダムの壁面でもヌ
タヌタ上がります。ただ、上がった後で鋭角のコーナーを越えることができません。
角落としを越えるのは難しいようです。ウナギは寿命も数十年と長いので、最上流
部まで到達するものもいます。また、泳ぎ始めると早い流速でも弱いので、水路は
伝って移動できるようにする工夫が必要です。せっかく魚道をはって上がれても、
上がった後ですぐに水流に負けて下流に引き戻されないように施工しなくてはいけ
ません。
マリアナ海嶺で生まれたウナギが、かつて親が育った川に戻るということはありま
せん。サケのように生まれた川への回帰(母川回帰と言います)はしないのですが、
「生まれた場所に帰る」と言う点ではサケと同じ習性です。上流のウナギが産卵の
ために海に下る行動(「降海行動」または「降河行動」と言います)については未解
明の部分が多く、川の中で一生を終わる個体もいると考えられています。
また、もともと産卵場に行くのは下流や沿岸域(海にもウナギはいます)にいるウ
ナギが主体との説があり、希少種として注目を浴びるようになり、河川内の生態や
生息環境について研究が急ピッチで進んでいるところです。
ネコは人と関わるようになって「魚」という予想もし得なかった食味の食料に出会
えました。ウナギとシーボルトミミズもそういう関係なのかもしれません。
回答は、徳島大学総合科学部 浜野 龍夫教授にお願いしました